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千石 ウナギ整骨院のお知らせ

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30分

治安の良いある国に住むある青年は,親のお金で通った大学の卒業を目前に控え,記念に海外旅行をしました。
行先は,治安がそう悪いわけではないが油断するとスリや置き引きをされるから注意するようにと言われる国。
青年はガイドから注意を受けたものの,荷物を手放さなければ大丈夫だろうくらいの認識でいました。

無事にホテルへ着き,荷物を軽くして食事に行こうと街へ出た青年。
そこで彼は後から走ってきた少年にハンドバッグをひったくられました。青年は少しの狼狽ののち追いかけようとしたものの,犯人の少年はもうどこにも見当たりませんでした。

幸い貴重品はポシェットに入れてあり,盗られたハンドバッグには少しの現金を入れてあったのみだったため大事には至りませんでした。
しかし平和な母国で何の危機にもさらされずに育った青年にとってこれは衝撃的な大事件でした。

帰国後,青年は過激な正義感に憑りつかれます。
大学を卒業し,地元の会社への就職をした青年は2年目の夏に連休を取り,再びかの国へ出向きます。
以前と同じホテルに泊まり,同じような身なりで街へ出ました。

すると,またしても青年のハンドバッグは走ってきた少年にひったくられます。
2年前と同じです。ハンドバッグの中身が現金でなく爆弾であること以外は。

ハンドバッグを盗った少年が見えなくなったとき,青年はスイッチを押します。
遠くでボンッと音がし,現場で片腕を吹き飛ばされた少年がうめいていました。

警察の捜査の結果,青年は逮捕され現地の法で裁かれることとなりました。

片腕を失った少年の家は大変貧乏で,唯一の働き手だった少年は仕事の収入だけでは家族を養えないと憂慮し,家族を生かすためにと初めて盗みを試みたといいます。
むろん,2年前に青年のハンドバッグを盗った犯人とは異なる人物でした。働き手を失った彼の家はさらに困窮することとなったとさ。

おしまい。





爆弾魔となった青年の動機は正義でした。
「罪を憎んで人を憎まず」という言葉をそのまま捉えるならば,彼はその通りの行動をしました。2年前の犯人ではなく盗みという罪そのものを憎んだわけです。

方法は間違っています。これは明らか。ですが,多少なりともその後の抑止力にはなったとしたらどうか。少なくとも盗みを働こうとした人にふと腕を吹き飛ばされる予感がよぎり,もし行いを改めたら,盗られそうだった人は間接的にかの青年に救われたことになります。

そう思うと,もはや正しいも悪いもごっちゃごちゃになってきます。だから法律って必要なんでしょうね。
法学部の友人が言うには,法律には「〇〇してはいけない」とは一切書かれていなく,「〇〇したら△△します」と書かれているそうです。
どんな動機があるかはさておきハンドバッグに爆弾を仕込んで少年の腕を吹き飛ばしたから裁きます,と至ってシンプルな話となったのは法律のおかげ。
一方,窃盗の少年は本来であれば加害者として正式に法で裁かれるシナリオのはずが,爆破というアドリブで一転被害者にジョブチェンジ。
総合して,青年が罪の重さ対戦で判定勝ちする形で悪者になった,という最適解に繋がらせられたということでしょう。



この事件が事実かどうかは確かではありません。つい最近,同級生が持ってきて30分ほど盛り上がったのがこの話です。
結論が出ない正義の話で30分,笑点で演芸+大喜利3つで30分,コアトレで腹筋を鍛える30分。

30分には色々な使い道があるようですが・・・思慮深く,笑って,健康に過ごしたいものです。


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