千石 ウナギ整骨院のお知らせ

【理科】身体と電気

 動物の細胞は活動する際に電気を発しています。少し面倒な話をしますと,普段細胞は細胞膜を隔てて中にカリウムイオン(K⁺),外にナトリウムイオン(Na⁺)があり,細胞が刺激を受けると細胞膜の性質がナトリウムを通しやすいものに変わり,外にいたナトリウムイオンが中に入ってきます。プラスのイオンが多く入り込んだ細胞の内側は、細胞の外側よりも電圧が高くなります。つまり,私たち人間を含め,動物は体内で発電をしているのです。

 もちろんその電圧で私たち自身が痺れてしまうようなことはありません。それは細胞で発生する電気は非常に微小でかつそれが重なって大きくならないように出来ているからです。身体の7割が水の人間が,細胞が刺激を受けるたびにビリビリしていたら身がもちません。

 しかし広いこの世界,自分の身体でできる電圧をうまく利用して生活している動物がいます。その一つが「デンキウナギ」。その名の通り電気を使うウナギです。デンキウナギの身体は他の魚と比べ特殊です。まず内臓の位置。デンキウナギの内臓は頭のすぐそばに詰め込まれています。前半分どころか,前3分の1くらいに全部入っています。人間だとちょっと考えにくいのですが,肛門がノドにあります。なら後ろはどうなっているのか?全部「発電器官」になっています。

 先ほど私たち人間が細胞で発生した電気で自分や他人が痺れてしまわない理由は「非常に微小でかつそれが重なって大きくならないように出来ているから」と述べましたが,デンキウナギの場合は異なります。細胞一つ一つの出す電圧は150ミリボルト。人間よりは大きいですが武器として使えるほど大きくありません。そこは同じです。ですが彼等はその細胞を規則正しく連結させています。乾電池を並列につなげば発する電圧は1個分ですが,直列につなげばその数の分,その圧は高くなります。デンキウナギは電気板としたその器官を体内で無数に直列つなぎをしているのです。それにより彼らが発する電圧は800ボルト!

 …それだけ?冬にドアノブを触って時にバチンッとなる静電気だって大体3000ボルト。デンキウナギなんて大したことないじゃないかと思うかもしれません。しかし,デンキウナギは水中の生き物です。電気をよーく通します。大事なのは電圧より電流。800ボルトは十分な威力になります。外敵から身を守ったり,食糧となる小魚を捕まえるために使うには申し分ない武装なのです。
 
 体内で大きな電気を作り出せるデンキウナギ。そこから着想を得て人の生活の役に立てようとする研究が進められているそうです。例えば心臓ペースメーカーや人工臓器。体内で電気が作り出せるのであれば,埋め込まれた機器の動力をそこから半永久的に得ることができるかもしれません。科学の力ってすごいですね。


過去の記事

全て見る