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千石 ウナギ整骨院のお知らせ

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【通院】保険治療の関門

 整骨院で保険治療をお受けになっていると,時々ある封筒が送られてくることがあります。「親展」と書かれた重要感のある封筒なので,送られてきた時はちょっと驚くかもしれません。中を見ると、整骨院に行った日や症状が起きた日,その原因や箇所など色々と記入する欄があり,慣れていないとちょっと億劫になりそうな用紙です。しかも,回答期限がそこそこ早く,届いた日にパパッと書いてしまわないといけないのでは…と思ってしまいます。当院ご利用の患者さん,もしそういった書類が来ましたらご相談ください。日時や症状などしっかり明記されたものがございますので。

 整骨院での治療が他のマッサージ店より安く設定されているのは,整骨院では保険を扱うことができるからです。患者さんのご負担が少ない分,保険組合さんの方に請求書類をお送りしてお代を頂いています。なので保険組合さんは,なるべく支出を減らしたい,当然のことです。そのために患者さんにああいった書類を送り,本当にその症状が整骨院を必要とするものかを振り返ってもらい,あわよくば「あー,それ保険組合がお支払いする案件ではないですね」とジャッジをするわけです。診察することなく保険か否かをジャッジできる,すごい能力です。その異能力,私もぜひ手にしたいものです。

 いきなり書類が来て3カ月くらい前の話をされてもわからないという方も多く,整骨院で治療を受けた首や腰の痛みがケガなのかと聞かれれば,「出血もないし…ケガというほどのものではないかな…」と思い,【ケガ以外】にマルをしてしまうこともあるでしょう。その時点で終わりです。保険適応外と判定されます。

 足繁く通って下さっている患者さんとは,ある程度の関係ができているため「こんなの来たんだけど…」とご相談に乗ることができるので対応のしようがあるのですが,通りがかりにお寄りになって一度だけ施術を受けて終わってしまった方とはそういった話ができにくく,確認することなく患者さんご自身の記憶で返答し,それが当院の請求内容と少しでも相違があると保険請求は無効になります。実に残念なことです。寝違えの治療をしたハズなのに,長年の肩こりで行きましたと回答があったため無効ですとか言われたときには,虚しさしか残りません。これでも色々手を尽くして治療を提供したのになぁ…と。

 こういうことが起きすぎてイヤになり,保険診療をやめて全て高額の自由診療に切り替えてしまう先生も多くいらっしゃいます。保険で治療したのに適応外判定,ご本人にも連絡がつかないとなると,ただ通りがかりの人を安く治療しただけになりますから。無理もありません。結果,整骨院の敷居が高くなります。整骨院は気楽に通える施設ではなくなり,保険で治療できたはずの症状を我慢する患者さんも出てきます。さぁ,得をするのは誰でしょう…?世の中の多くは誰かの思惑で動いているようです。

 一応まだ保険診療をやっていこうと思っているので当院では問診時に必ず保険の話をしています。どういう症状が保険を使えるかをお話ししています。保険は「症状を治す」ためにあり,治すためには数回通う必要があります。ちょっと揉んで欲しかったくらいでは使えないものですということを説明した上,患者さんに選んでいただいています。言いかたは少し尖りますが,通う気がない人はほぼイコール治す気もないと言えるので,場合によっては自由診療をお勧めすることもあります。

 こういうことを言うと,初診の患者さんに厳しい目を向けているのかと思われてしまうかもしれませんね。実際その通りかもしれません。ですがそれはまだ症状についての情報を入手出来ていない患者さんに誤った治療を提供しないために必要なことと思っています。通えない患者さんに,週3通院を見越した治療をしては無意味になってしまうおそれがありますから。
 
 そのスタイルに切り替えてから保険治療で一回で終わることが格段に減りました。また,切り替え前の3月以前と比べて今では患者さんののべ人数は月平均50人くらい増えています。敷居は以前よりちょっと高くなっているのですが,その分ちゃんと治そうと思って来てくれる患者さんに絞られたように思います。方針は合ってるんじゃないかな…。誤解を招くといけないのですが,ちょっと揉んでくれという感じの方を拒否しているわけではありません。その場合は保険ではなく自由診療になりますというだけです。

 制度は良し悪し関わらず制度。ならその制度の下で,なるべく正しくやっていくしかありません。

 いや,違いますね。
「お上の事には間違はございますまいから」(森鴎外『最後の一句』より)


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